飛騨の細道 138-「風土と人(後編)」

暮れも二十五日を過ぎると、
クリスマス飾りは正月飾りへと一変し、
年が明けると同時に、神社は初詣客でいっぱいになる。
かと思えば、盆になればお墓の前で数珠を持ち、
亡き人に手を合わせる。

こうした姿を見て、「日本人は信仰をもたない民族だ」と
強固な一神教の外国人からの声を聞くことがあるが、
「しめ縄飾り」を説明しようとすると、
このつじつまのあわない信仰心が壁となり、
なかなか難しいと通訳は言う。

飛騨の里には昔から言い伝えられてきた、
車田という独特の稲作文化が残っており、
秋に収穫された稲穂とわらを使って「しめ縄飾り」が作られる。

太陽の恵みと大地の生命力にくわえ、
巨石、巨木や火、雨、風、雷などといった自然現象の中にも
「神」が宿っていると考える日本人は、
それと思わしき場に「しめ縄」を飾り、
神との結界を設けるのである。

稲作文化ひとつとっても、
東と西の文化の隔たりは大きいが、
まったく異なっていたり、どこか似ていたりもして面白い。

さて、来年はどんな隔たりに出会うことができるだろうか。
旅もまた人生である。