飛騨の細道 5 - 「祭りの一こま 妖しげな通り。」


■祭りの一こま 妖しげな通り。

よそでは夜店とか出店というのだろうが、
高山では誰もが「香具師(やし)」と呼ぶ。
春・秋と祭りを二分する高山祭りだが、
若者は屋台や祭礼行列より、じつのところ香具師が大好きだ。

山国には109やスペイン通りはないが、
古都の町に妖しげな通りがこつぜんと出現する。
香具師が軒を列ねるこの場所は
若者にとって唯一のプレイスポットで、
制服から私服に着替えた若者が物陰でたむろをしている。
何をしているのかといえば、
女の子にスペクトル光線をピッピッと放っているのだ。

ところが首から下はだてこいても(めかしこんでも)
中学生は全員が坊主頭だから、
門前の小僧のようでぜんぜん様にならない。
 
そういう私も四〇年前は坊主頭。
カステラボールの屋台の蔭から、
女の子にスペクトル光線を放っていたくちだ。
結局、彼女を見つけることができず、
ヒヨコを買って夜道をひとりで帰ったような気がするな。
 

 

 
写真/秋の高山祭○宮川河畔で