飛騨の細道 4 - 「祭りの一こま 嫁にいくなら屋台持ちへ。」


■祭りの一こま 嫁にいくなら屋台持ちへ。

屋台のある組の人は、屋台がない町内の前で自慢する。
ところが表向きの華やかさとは違い、
屋台を維持するには人足とお金がかかり、
台所事情はなにかと大変なのだ。
それでも長い冬が終り、春がやってくると
屋台組の人はソワソワとしはじめ、
遠出した息子と逢うような心境になるという。

昔は屋台は女人禁止で、
女の子は屋台に乗れなかったが、
知人の頃になるとおかまいなしに乗せてもらえた。
高山では祭りが優先され、
祭礼に参加する子どもや大人は、学校や会社を休むことができる。
さらに屋台組の子どもは、同じ組の男衆にたいそう可愛がってもらえ、
同じような年の男の子を屋台の上から見おろせるのだ。
まさに女の子にとってこれに勝る快感はなく、
この味を知った娘は大きくなると、
誰しもが屋台のある人のところへ、
お嫁に行きたいと願う。
 

 
写真/秋の高山祭○安川通りにて