飛騨の細道 193-「高山祭りのお囃子」


■高山祭りのお囃子

畳み4枚ほどの小さな空間に座っているのは
春の高山祭り、「鳳凰䑓」の上で笛を吹くお囃子のメンバーである。
その内訳はそばやの娘さん、陶磁器を売る娘さんやお嫁さん。
さらにそこに今年デビューする小学生が加わる。

祭り屋台は女人禁止と言われていたのはとうの昔の話。
祭りを守る組衆の後継者不足から、生演奏ができる屋台は少なくなった。
それを考えると通りで店を構える女性たちが、
お囃子の生演奏を続けているのだから、
神様もそこは大目に見てほしい。

屋台の一番最上段。右隅で笛を吹くのが、リーダ格の松山明起子さん。
彼女は中学1年生から父と一緒に屋台に乗った。
それ以降は屋根に飾る”鉾”の取り付けの準備を
兄や父と一緒に手伝っている。

屋台の最上階はまち家の屋根と同じ高さに設計されていることを発見。
何かあったとき、咄嗟に屋根に飛び移る?
家々の屋根より高くするのは、たとえ神様でもまずい?
などと理由を考えたがどれもまとはずれの感が。

屋台が動きだした。
ぎしぎしときしむ大きな音に連れ、思った以上に揺れはひどい。
上にいけば行くほど揺れは大きく、
屋台の角に座り、欄干を背に足を踏ん張って両手を離すのは怖い。
下から眺めるのと違って上で笛を吹くのはなかなか大変なのだ。

高山の屋台の中で一番大きい「鳳凰䑓」は
文字通り鳳凰がマスコットになっているのだが、
昨年、鳳凰のお尻の羽根が胴体から落下してしまった。
高山市文化財課からの補助で無事修理がなされ、
4月7日に修理完成のお披露目と祭りやわいを兼ねて、
鳳凰䑓が上二之町を練り歩いた。

本番さながらの衣装を見て、
さらに笛のお囃子を聞きつけ集まった観光客は、
祭り前の特別イベントに大喜び。
私は「鳳凰䑓」の法被を着て、念願の屋台にのぼらせていただいた。
せまい下層部分からはしごに足をかけ最上階へ。
上から見下ろす町並みは新鮮で、真下を歩く観光客が小さく見える。
「あ〜、この感覚なんだなぁ。祭り屋台の子どもたちが得意になっていたのは」

古い町並みの屋根の美しさを背景に笛を吹く楽士たち。
一年に一度やってくる祭りを心待ちにする人たちは、
どの顔も柔らかくて美しいのだ。