飛騨の細道 194-「77歳の新進作家」


■77歳の新進作家

年を重ねるごとにアイデアが斬新になっていく作家がいる。
森田義夫。(高山市在中)今年77歳になる新進のこより絵作家は
まさにそれである。

彼は若くして父の仕事と同じ杣工(そまたくみ/そまく)になった。
杣工とは山へ入り木を伐採し、切り倒す仕事だ。

斧からチェンソーにかわり、
杣工たちは振動病という病にかかった。
チェンソーの振動で手や腕、関節に障害が起きるのである。

振動病は白鑞病(はくろうびょう)ともよばれ
手や腕はろうそくのように白くなりはじめる。
森田さんは入院生活を余儀なくされてしまった。
その頃、幼い日の自分を思い出し、退屈しのぎに
毎日スケッチブックを絵で埋めた。

作家山下清のようなちぎり絵ではない、新しいことをしたい。
模索した森田さんは障子紙に目をつけ、
こよりを撚ってそれに色をつけることを思いついた。
それを根気よく1本1本貼っていくのである。

30代ではじめたこより絵の画風はどんどん変わっていき、
屋台や獅子舞いなどの郷土芸能をとびこえ、
北斎漫画のかえる相撲や音楽など、
斬新なものへと進化していった。

時間がかかればかかるほど楽しいなぁ。
ひい孫のリクエストがヒントになるんや。
一番好きなものをど〜んと中心に据えるんや。

新進こより絵作家の一語一句はどれもが大胆で極太である。

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写真/虫や花、蟻。動くものは2時間見ていてもあきないという。