飛騨の細道 182-「堀りごたつ」


■堀りごたつ

仲違いをしても二人でこたつに入れば、
けんかはおそらく長続きしないであろう。

人肌のぬくもりが漂うこたつは
日本人の”座る”風習から生まれた発明品だと思ったが、
なんとイランにもあるという。
「コルシ」という呼ばれるそれは日本と違ってテーブルの下に設置。
テーブル全体を毛布で覆い、椅子に座って暖をとるそうだ。

日本のこたつの歴史を遡ると、
室町時代の禅院にはじまったというが、
当時はいろりの上にやぐらを建て、
その上に布団をかけて暖をとった。

江戸時代に入ると掘りごたつが登場。
床から掘り下げた30cmほどの小さな凹に
土製の容器を置き、炭を入れて使っていた。
現在の電器こたつのように移動はできないのが欠点だが、
ファンヒータもない当時では画期的だったのではないか。

冬以外は掘りごたつの上にも畳をひくため、
そのしくみは見えないのだが、
ところが階下から仰ぎ見ると天井からは妙なものが飛び出す。
店の中に足を入れた観光客は天井を指差し、
”あれは何ですか?”となり、
家人はその都度丁寧に説明をするそうだ。

観光客はまるで面白いものに出くわしたように感心し、そして喜び、
写真を何枚も撮ってゆくというが
えび坂上にある醤油屋の”マル五”の堀ごたつは
一年を通じ、旅人との団らんに一役買っている。


写真/同じ部材で凸をまとめられているため、余計に知りたがる。