飛騨の細道 161-「ざいごさが見た下町」


■ざいごさが見た下町

写真を撮っていて怖いのは、
初期の「おっ!」が少なくなることである。
物を見る目が知らぬ間にマンネリ化してくるのだ。

それを打破するのには旅。
ということで、
東京の浅草、谷中、そして根津や本郷などの下町をおとずれた。

路地から路地をもとめ、あみだくじのように歩く。
たたずまい。出会う人。町名。音。話し声。
自分がまっさら状態だと、
いろいろなものが飛び込んできて、
高山の下町とだぶってきては消える。
それでもよくよく見れば、高山にはなくて東京にあるものが
多いことに気づく。

狭い路地に所狭しとならぶ観葉植物や鉢もの。
常緑樹であふれる庭。
路地裏の濡れた石畳。
あるのか、ないのかわからないような案内看板。
光と影のあるたたずまい。
ステンレス製の手すり。
よくしゃべる住人。
正体不明の妖しげな住人。
スローモーションのように歩く猫。
閑静な住宅にかこまれた幽霊屋敷。
しっとりとしている横道の空気。
糸垂(しで)と紐で作った玄関前の妙な結界。

谷中をあとに地下鉄で浅草へ。
(東京メトロはどこにでも行ける)
浅草の初音小路は昼日中から酒を飲んでいる人が多い。
べつだん誰もがアル中ではないのだが
ビニールシートで囲んだ屋台風の店は見るからに楽しそうだ。
見れば通りすべてがビニール製の飲み屋、
ホッピーの文字がやたら目につく。

絵になる老婆1名と爺2名発見。
さりげなくテーブルにカメラを向けたとたん、
「撮るんじゃないよ〜ぉ」。
怒られた私、「さすが江戸っ子、怒っても粋だ」。

※ざいごさとは飛騨弁で田舎者をいう。


写真/上からふしぎな結界。本郷の一葉坂の階段と木造家屋のたたずまい。(右まんなかと左うえ)
藤の木が有名な浅草初音小路。(左まんなか)オレンジと黄緑にこだわる家主。(一番した)