飛騨の細道 205-「飛騨の珍事」


■飛騨の珍事

私の住んでいる町には
北山公園と城山公園とよばれる二つの公園があります。

広くて平坦な地形を想像して訪れるととんでもない公園で、
ハイヒールなんぞ穿いてくると痛い目にあいます。

いずれの公園もまるっと山、そのもの。
先だっても城山公園には熊が出没し、
遊具があって売店まである二の丸(城山には高山城があった)公園も
危険というおふれが出ました。

その公園に隣接する旅館では一時お客さんを、他の旅館へ
退避させたという噂が市内に飛び交っておりました。

そんな野趣あふれる?公園に
少々オタクぽい怪しげな若者が30人ほど整列して、
記念写真を撮っていたのです。

「なんて飛騨!」「トミタ栞○○ツアー」と称した、
ボードと横幕を前にして、幾度も「ハイ!チーズ」を
繰り返しておりました。

同伴者がボードをチラと見て、「へー、トミタ栞かッ」
するともうひとりがキャーッとはいわずに、ややあいまいに、
「ふーん、トミタ栞、かァ」
つまりそこにいた全員が自信がないのです。

「トミタ栞」というタレントだか、歌手がいて、
ファンがたくさんいて、それは世間周知の常識なのに、
ひょっとしたら自分だけが今のいままで
知らなかったのではあるまいか。
というような時代に取り残されてしまったような……。

ちなみに「トミタ栞」は八軒町にある「豆天狗」という
おそば屋の娘さん。
TVやラジオでは人気の歌手兼タレントさんだとわかりました。
本年62歳の老生が知っているのは
ノーベル賞受賞の「白川英樹博士」と「清水ミチコ」まで。
米沢穂信や大沼紀子など、飛騨出身の有名な小説家がいることも
最近知った次第です。


写真/笑顔が素敵なトミタ栞