飛騨の細道 131-「鎮守の森の神移し」


■鎮守の森の神移し

神さまが鎮まる社から御神体を抜き取り、
本殿に持ち込んだ神輿へ移す儀を神移しという。

御神体を手にした宮司を神官らが白絹の幕で覆い隠し、
オォ〜とうなりながら運ぶのだ。

御神体はまじまじと見ることは許されず、
人は頭をたれ、深く拝をする。

こうして無事、御神体が神輿に乗ると、
担ぎ手によって参道を下り、お旅所へとむかう。

実のところ、毎年神移しをおこなっても、
御神体がどのようなものなのか、宮司も神官も知らないようだ。
まして氏子は知る由もない。

日本の神様はご神木と呼ばれる大きな杉や、大きな岩、植物、動物、川、
さらには男根や女陰に似た木塊や岩に、
お鎮まりくださると信じている。

宮司が抱える御神体も、中を見れば「えっ!これが?」と
驚くようなものかも知れないが、
「神がそこにお鎮まりくださる」と頑に信じることが、
なによりも大切なのだ。


写真/社殿でおこなう神移しの儀