飛騨の細道 130-「たおやかな美」


■たおやかな美。

高山を終いの住処としている私が、
「ああ、高山っていいな」と感じるのは、
些細な風景の一片に触れたときだ。

そうしたものは得てして繊細で、こわれやすいものなのだが、
生活のなかから垣間みる美は「粋」なのものである。

木板看板の漢字と朝顔。
これは箱屋である。
店名をあしらった玄関前の風鈴は料亭。
障子戸の端にあしらった鯛の藍染めは民芸店と、

いずれも簡素な暮らしの中に咲く、一輪ざしの花のような、
たおやかな美を醸し出している。