飛騨の細道 123「特権」


■特権。

季節のうつろいに疎くなった現代人でも、
ハナミズキやしゃくなげにまじり、
イチョウやケヤキや柳が新緑になってくると、
気分が華やぎ、若返ってくる。

新緑を見ていつも不思議なのだが、
若木だけでなく樹齢千年近くたった木も、
新緑となって若返ることだ。

これが動物だったらこうはいかない。
年をとればひたすら老うばかりだ。

樹木は他の生き物と違い、
大地に根を張るから動くことができず、
歌うこともできない。

神さまはそれを憐れみ、
動くことのできないかわりに、
毎年一度は新緑に若返る特権を与えたのだ。

山々が新緑であふれるこの季節。
若返る特権であふれる飛騨は、
まばゆいくらい美しくなる。


写真/芽吹いた柳