飛騨の細道 121「あまたの神々がおわすところ 」


■あまたの神々がおわすところ

石清水八幡宮の分社である桜山八幡宮では、
5月の3日から5日にかけ、
飛騨国中から140社の神様が集う『式年大祭』が執り行われる。

その開催年は30年という悠久の時を経て執り行われるもので、
昭和26年、昭和56年、そして平成23年の今年がそれに当る。

大祭は飛騨地域の各神社の神や氏子らが
国家安奉と繁栄を祈る壮大なもので、こうした神事は全国でも類はない。
まさに『式年大祭』は、飛騨の文化が影印されている貴重な祭礼なのだ。
(梅村騒動後、飛騨びとを鎮めるため、
飛騨一宮神社に産土神さまが集まったのが起源とされる)

開催年はなぜか天災に見舞われたり、世の中が乱れたりと、
大きな災いが起き、式年大祭を別名『世直し大祭』と呼ぶ理由がここにある。
(昭和56年のときは豪雪年だった)

飛騨ではふるさとと産土神さまとのつながりはとても深いが、
八百万の神々が集結し、いろいろなことがらについて話しあう様は、
出雲大社の『神在祭』とによく似ている。

式年大祭の見所といえば、華やかな神幸行列なのだが、
どこかオリンピックの入場式を彷彿とさせる。
選手団がわずか三名ほどの小さな産土神さまから、
神輿や獅子舞、大太神楽や雅楽、闘鶏楽や警固を引き揃え、
総勢100人ほどの祭行列を繰り広げる大きな産土神さままでいろいろなのだ。

見ると闘鶏楽や雅楽の衣装や色やデザインにくわえ、
獅子舞いも産土神さまごとに違う。
その様子は『千と千尋の神隠し』の、
湯屋に集まる八百万の神々のようで個性があっておもしろい。