飛騨の細道 117-「流麗な日々」


■流麗な日々

飛騨には飛騨路があり、大和には大和路がある。
さらに飛騨には飛騨の里があり、大和にはいかるがの里がある。

名前もちがえば、歴史もちがう両者だが、
この二つはとおい昔から深いつながりがあるのだ。

聖徳太子といえば法隆寺だが、
その境内の金堂には釈迦三尊像(国宝)が安置されている。
この本尊は王后王子が聖徳太子を偲んで
プロデュースしたというのだが、
制作は鞍作止利(くらづくりのとり)という仏師だ。

この仏師の誕生の関しては色々な説が飛び交っているが、
いまでも飛騨の人は鞍作止利を飛騨の匠と信じてやまない。

高山から富山方面へ車で30分。
小鳥川に沿って続く里山は河合村とよばれ、
「あ〜野麦峠」の主人公、
政井みねさんが暮らしていた村だ。

この村には昔から逸話があり、
鞍作止利はこの村に住む娘が産んだという話が、
まことしやかに伝えられているのだ。

その真意はまあ別にしても、
都の建設に多くの飛騨の匠が奈良県まででむいたのは事実で、
現在でも奈良県には河合村や月ケ瀬、斐太町など、
同じ地名の在所名が残っている。

千四百年の悠久の日々はなんとも不思議で、
流麗なものである。