飛騨の細道 25 - 「宮川朝市に思う」


■宮川朝市に思う
 
久々に宮川朝市を歩いてみたら、
いぜんいた売り子さんは知らぬ間に姿を消していた。

笑えば顔かたちがしわのなかに隠れてしまうような、
年輩の売り子たちがいないのである。
みるとどの女性もおしゃれで若々しく、
そして話じょうずなのだ。

かつてはいた田舎くさ〜いおばあちゃんたちは、
どこへ行ってしまったのだろうか。
孫の子守に明け暮れているのだろうか。
それともゲートボールに夢中になっているのだろうか。

「朝市にも新旧の交代が……」などど感慨ふかく考えいっていたら、
「これ、食べていかんかな」の声で思わず我にかえった。
そういえば、売り子さんを見ているとその様子はさまざまである。

新聞を読んでいたり、となりの売り子さんと雑談している人もいれば、
居眠りしている人もいる。

この売り子さんは赤かぶら漬けを袋ごと差し、試食をすすめていた。
目の前のナベにはどうやら炭を入れているようで、
暖をとりながらついでに餅を焼き、これもすすめるようだ。

そのしぐさはデパチカの売り子のように洗練されていないぶん、
お客とのふれあいはじつに高山的だった。