飛騨の細道 135-「歴史」


■歴史

32年前に建てた工房を、
いまだ丁寧につかっている陶房がある。
渋草焼きで有名な芳国舎だ。

しかし、最近では長きに渡ってなんとか持ちこたえてきた陶房の土壁が
ついに損傷し、今月から4ヶ月間修復工事に入る。
陶房は市の有形民俗文化財という指定が行われているが、
修復費の大半はあるじ持ちだ。

かといってひとたび有形民俗文化財に指定されると、
足かせ手かせがかけられ、主だからといって、
そんじょそこらのものを勝手に変えたり、
処分ができないのだ。

132年の伝統ある陶房の中へと足を踏み入れてみれば、
ガタついたガラス窓からはすきま風が入り、
昼間でも薄暗く、ここで年がら年中、
絵付けをする職人らはさぞかしきつかろうと思う。

観光客から見れば、こんなに味のある建物を、
後世に残す主を賞賛するが、
本人はいっそ取り壊してしまって、
機能的で明るい陶房にしたいと思っているに違いない。


写真/夕日を浴びる陶房