飛騨の細道 128-「夏の一木一草」


■夏の一木一草

古い町並みに代表される三町は、昔ながらの町家造りが軒を連ねるが、
見れば通りは一般の公共性をもちながら、
同時に軒下というあいまいな空間によって、共同体的なつながりをもっている。

そのあいまいさを生かして、自分の鉢植えの趣味を他人にも楽しんでもらおうと、
三町ではずいぶんと前から、朝顔によって無言のあいさつをしているのだ。

調べてみると、この朝顔は日本種ではなく、
西洋種でヘブンリーブルーと呼ばれる品種だ。
花期は日本種と較べると長く、7月から10月頃まで楽しめる。
さらに真夏でも昼過ぎになっても咲いているなど、
大変花持ちがよいのだ。

生活のそこここに息づいている花は、歩く人にやすらぎを与えてくれるが、
朝顔のブルーは格子の美しさに相まって、
無彩色に近い町家の色合いが、さらに美しさを際出せている。

ひとツルの花の美しさは、育てる人の感情と、
花が訴えてくる感情と、
場が持つ感情との三つが重なって、はじめて生まれるのである。


写真/町家の夏