飛騨の細道 207-「しんどいバス。されど……」


■しんどいバス。されど……

新しい顧客のおかげで、月に2回東京へ出向くようになった。

現在、東京へ行くには中央道を使って、
高速バスか、マイカー。
JRを使って名古屋、そして乗り換えて東海道新幹線。
そこに3月14日より、JRを使って富山、
そして乗り換えて北陸新幹線という方法が加わる。

さて所要時間なのだが、中央道は5時間と30分。
(バスの場合)
太平洋側周りだと4時間10分。
日本海周りだと3時間40分という選択が
生まれてくる。

あらためてこの時間というものを考えてみると、
人間は「時間」を考察する生き物であるということ。
ちなみに人間以外の生き物は時間とは無縁である。
猫が寝過ごしてしまったと、後悔する様子は皆無だし、
犬が時計を見て食事をねだることは皆無だ。

観念的な言い方をすれば、生きるということは
一度限りの固有の時間を生きることであり、
時間の中に身を投じることなのである。

ちょっと話が哲学的になってしまったが、
少しでも効率のよい使い方をするために、
移動時間を短縮することは当然なのだが、
時間が短くなればなるほど、代償は高くなる。
(富山空港から羽田というのが一番速くて、
値段は一番高い)

代償が一番安くて、一番時間がかかる高速バスが、
感覚的には私にもっとも似合っていて、
車窓から眺める景色に手が届きそうなのも、
このしんどいバスなのである。


写真/上が諏訪湖。下が夕方の八ヶ岳(いずれもバスの中から)