飛騨の細道 206-「雪またじという徒労な作業」


■雪またじという徒労な作業

この冬はおおかたの予想を裏切り、
クリスマス寒波の前にドカ雪が飛騨を襲った。

30年前の大雪と違い、
今回は松の木が雪の重みで軒並み倒れ、
一週間以上経った今も道路を塞ぎ、
国道が通行止めになっているのだ。

今年になって急激に増えた中国人の団体さんは、
雪とは対象的に服装は黒一色で、一目でそれとわかるのだが、
彼が手にするカメラの先には、
雪またじに精を出す地元人があちらこちらにいた。

観光客の往来で賑わう橋詰めの派出所の壁にも、
除雪の必需道具がきれいに並べてあり、
雪国ならではの装いである。

見ればスノープッシャーにポリカスノーシャベル。
アルミスコップにママさんダンプとスノーダンプ。
あわせて5点の除雪道具である。

ドカンと積もった軽い雪。湿って固くなった雪。
はたまた凍ってしまった雪など、
大工道具と同じで適材適所で除雪道具を使い分けるために、
これだけの道具が必要になるのだ。
大工道具は一見して人のために役立つものを生むが、
雪を捨てるだけの除雪道具は生産性がまったくない。

一人で暮らすお年寄りは
なんと50,000円ほどの代金を支払って、
屋根の雪をまたじをしてもらっていると聞くが、
雪の重みは家屋だけでなく、財布まで圧迫している。