飛騨の細道 126-「江戸の老人力」


■江戸の老人力。

こうした類いの肖像画は見せられても、関心をひくものではないが、
いまの高山の観光資源の元をつくった殿様となれば、
多少は興味をもつのではないか。

金森長近という殿様は二十歳頃、
織田信長のお目付役として仕え、
その後秀吉、家康にも仕えた。

千利休に茶を学んだ長近は、
持ち前のセンスで、城下町高山の都市計画に励んだが、
その人生は、すべてがエネルギッシュで破天荒だったという。

七十七歳には馬にまたがり、戦場へも駆けつけた。
さらに八十二歳には子どもを作るなど、
年金生活で細々と暮らす老人を、
一喝するような殿様だった。
しかし、その一方では家族愛には恵まれず、
弟は信長とともに死に、残る弟も死んでしまった。

念願叶い、高齢で父となった長近は、
世継ぎを息子に託したが、さらに不幸は続き、
子どもは六歳で亡くなり、妻も病死してしまった。

財産はすべて幕府に没収。
長近は家族に見守られることなく八十三歳で、
この世を去った。

それから四百余年。
唯一の救いは世界にも名を馳せる観光資源を、
後世に残したことである。

まちの博物館。
当時の豪商の蔵を使って博物館に。
ここでは高山の歴史や工芸、伝統文化を
知ることができる。
年中無休/入館無料

写真/金森長近とまちの博物館