飛騨の細道60-「イボ取りの薬師如来さま」


■イボ取りの薬師如来さま

NHK『ゆく年くる年』でおなじみの大雄寺には、
鐘楼をはじめ仁王門や六角堂、
さらには十王堂など、伽藍の大きさに比例して見どころがたくさんある。

まず、ここへ訪れた人はそそりたつ山門の仁王像や
大きなわらじを見上げるようにして石段をのぼるが、
そのなかほど左手に、繊細で美しい屋根をもつ六角堂が。
さらに右手下には高さ二メートルほどの石仏が目に映る。

よくみると右腕は肘から先が欠け、顔だちも風雨にさらされて、
六角堂や仁王さまのような華はない。
ところが聞けばこの石仏、イボ取りの薬師如来だというのだ。

薬師さまといえば手にするのは薬壷だが、
この石仏は手のひらに宝珠をのせている。
やがてこの宝珠を削った粉がイボにいいと噂され、
宝珠はイボで悩む人に少し削られ、また少し削られていった。
そして手が消え、さらには腕までが消えてしまったというのだ。

現在、イボをなくすにはレーザーや液体窒素などで除去するのが主流だが、
それとはまったく対象的な精神療法で消し取ってくれるのが
『イボ仏様』のご利益。

いまでもご住職が祈願したお水を患部に塗り、
お願いすることで消えたという実例はいくつもある。
なかには「高山の皮膚科の先生に聞いてやってきた」という人もいて、
こうした時代、ご利益についてまわる話しはどこかほのぼのとしている。

『飛騨の通』の東山寺院巡りでは仁王門、六角堂、十王堂にくわえ、
イボ取りの薬師如来に出会うことができる。