飛騨の細道 40-「270年続く、飛騨の老舗料亭-3」


■270年続く、飛騨の老舗料亭-3
 
別れ際、佳子さんはこんなことを口にした。
「よそさんがどんどん変化に付いていってるなかで、
洲さきは昔から同じです。建物もしつらえもこれといって
大きく変えることはありませんでした。
温故知新という言葉がありますが、
長く続いてきたものにはそれなりの良さがあると思うのです。
それを歴代の従業員が大切に守り、
お客さんがその良さを理解してくれたからこそ、
今の洲さきがあると思っています」

日本文化のど真ん中で日本の料理は
いかにも華々しく咲き誇っているように見えながら、
よく目を凝らせば、それを支えている人たちがしだいに
衰退していることも事実だ。
それは料理だけでなく、ありとあらゆる伝統文化についてもいえるが、
高山盆地の風土と歴史とともにつましく生きてきた老舗料亭洲さきは、
微妙な様変わりをくり返しながら、
佳子さんから次世代へと有形無形で生きつづけるにちがいない。


写真/忙しく立ち回る女将