飛騨の細道 170-「みどころのある地産地消」


■みどころのある地産地消

このパッケージには見どころならぬ、紋所がある。
「え〜い、頭が高い、ひかえオロウ〜!
この豆腐を何と心得ておる。陣屋とうふにあらせられるぞ」
見ていると格さんのセリフがパッケージから聞こえてきそうだ。

徳川家の葵の紋をあしらった豆腐。
本店のすぐ先が高山陣屋という縁で生まれた「陣屋とうふ」である。

地の利を生かした商品であるが、
この店がつくる「あげづけ(あげを醤油でからめたもの)」が
某タレントに「うまい!」と絶賛され全国に知れわたるやいなや、
値段はすこしばっか上がった。
その前は「みそ風味の豆つかげ」を別の某タレントが紹介していた。

見ればあげも豆つかげも大豆を使用している点で共通しているが、
レシピもじつに素朴である。
あげづけは一晩冷蔵庫で冷やし、翌日しっとりしたあげに
秘伝の醤油をからめるだけ。
豆つかげは豆を数十個かため天ぷらにしただけ。
あげづけはあったかご飯や酒の肴に、
豆つかげはおやつというのがなんとも飛騨らしい。

ここに朴葉みそなんかがくわわると、
「飛騨の人はほかに喰うもんがなかったのかね」
とその質素さに驚くほどである。


写真/水屋のわきで葵の紋が主張する