飛騨の細道 148-「情景」


■情景

古い町並みを後ろに控える宮川河畔とくらべると、
観光色が薄い江名子川界隈は、時代に取り残された感があるが、
ここにはかつての庶民の暮らしぶりがそこかしこに残っている。

軒をつらねる間口の狭いしもた屋風の家屋、東山寺院へと続く坂道。そして長屋。
目線を下に向ければ、水辺に降りるコンクリートの階段は風化して角が丸くなり、
小さな草花は濡れて光る苔の中で花を咲かせている。

島川原町や吹屋町あたりに住む子どもたちは、
小さな橋をわたり、町家の間を抜けながら歩道橋へ。
さらに大雄寺のお寺を左手に見ながら、
再び、しもた屋風の家屋が続く坂道を歩いて学校へいく。

この界隈には自然とともにこわれ、荒んでいく変化の美しさがあり、
子どもたちは知らぬ間にそれを肌で感じ取って大きくなる。


写真/古柳橋と子どもたち