飛騨の細道 133-「郷土芸能 」


■郷土芸能

春の田作りにはじまり、秋の取り入れと
稲作を中心とした日本の風土記のなかで、
祭りと獅子は切ってもきれない関係がある。

しかし目を凝らしてみれば、
獅子舞いなどにノスタルジアを感じる古老などが苦心をし、
獅子連中を復活しても、
それを持続していく社会力はもはや変容し、
小さな村ほど枯渇しているのが実状だ。

地方の文化伝承がますます困難になる時代、
荘川(高山市)でおこなわれている『日本一の連獅子』は、
じつに貴重な祭典といえる。
(荘川地区の5つの鎮守様から集まった30頭の獅子)

赤と黒。そして金。さらにユタンの緑青に代表される獅子は、
素朴でグロテスクで、それでいて美しいが、
じつのところユタンには群青色や黒、そして茶色などがあり、
いずれも風化しかかった色合いが日本的でとても美しい。

舞いを終えた30頭の獅子を前にして、
観客は手にしている100円玉を気勢をあげながら口に押し込む。
いわゆるおひねりなのだが、
一見する獅子に咬まれているような錯覚になる。

獅子のなかには舌があるのもいて、
おひねりを舌に絡めながら、
上手に巻き上げる様はじつに可笑しく、
郷土芸能がいつまでも里山生活に
息づくことを誰もが願う。