飛騨の細道 196-「無愛想も職人ワザ」


■無愛想も職人ワザ

革のつなぎを着たライダー2人が
醤油をまぶしたばかりの”あげづけ”を口にする。

「うまいですね」
「……」
「おいしい、おいしいなぁ」
「……」

豆腐に対し、確固たる信念があるのか、
客の感想にも店主はだんまりを決め、
ありがとうもいわない。
じつにつっけんどうである。

ここでは富山県のエンレイ豆を100%使用。
水は乗鞍岳の地下水を使い、
昔から使っている地釜で煮ていると言うが、
味が濃い。大豆の香りがする。
木綿豆腐はおどろくほど固くて、どっしりしている。

家族2人で作る量は町のそれとくらべると、知れているのだが、
ひとつ一つの商品には職人の意地が十二分とにじみ出ていて、
何を食べてもおいしい。

さらにお客におべんちゃらを言ってこない無愛想さは、
昨今のマニュアル化された対応とくらべると
じつに清爽としていて感じがいいのだ。

乗鞍岳の麓、丹生川町駄吉で豆腐をつくる川瀬豆腐(本業は旅館業)
高山から158号線を乗鞍方面を向かうこと車で40分。