抱腹絶倒の遊覧船。『なにわ探検クルージング報告』

天井が電動で開閉し、客席も上下する。 大阪といえばうどんのダシは薄味なのに、なぜかコテコテの人が多いと不思議がられるが、実のところどこへ行っても彼らは饒舌で面白く、そしてパワーがある。そのエネルギー源はどうやら「笑い」にあるようで、今回紹介する落語家と行く『なにわ探検クルージング』も「舟の
中でも笑わしたり〜な」という関西人の笑い好きから誕生したものだ。


 ところで水の都、大阪を代表する川といえば道頓堀川が挙げられるが、最近では熱狂的なタイガーズファンが興奮のあまり、橋から何人も身投げ?したことで話題になっている。
 このクルージングはその道頓堀川から出発し、およそ100分をかけて六つの運河を繋ぎながら水上遊覧するのだが、桜の開花にあわせ、川から眺めながめるお花見は情緒があり、一見の価値がある。さらに船室(天井は電動で開閉し、船室も橋桁の高さに合わせ上下する)からは大正ロマン溢れる欄干や手摺、そして旧財閥のクラシックな建物、そして大阪城などを見ることができるが、このクルージングの特徴は目だけでなく耳でも楽しめることだ。この日、腹一杯笑わせてくれた落語家の桂ちょうば。
 たとえば乗る前の諸注意なんてのは本来からいって面白いものではないのだが、新進落語家の手?(口)にかかると、「そんなことされたら、かなわんな……」「往生しまっせ」と、聞く方が思わず笑ってしまうのだ。全てがこんな調子だから知らぬ間に落語家の手の内に踊らされた乗客は終始、目から泪を流し、船内で腹をよじって笑い続けてしまう。さらに乗客がツッコミを入れれば入れるほど、落語家はボケるから、笑いのボルテージは更に上がる。(婦人会や町内会など団体で船を貸切ると誰に気兼ね別れを惜しんで桟橋でガイドと記念撮影。をすることもないから大いに笑える) 笑いの効用は今さら言うまでもないが、桟橋に戻る頃には知らぬ間にストレスを発散しているだけでなく、隣の人との距離がう〜んと近くなったような気になるのだが、効用としては後者をぜひとも求めたい。
            写真・文/山本純一